D2C事業者のための景品表示法ガイド|2024年改正対応

Compliance Guide / 景表法 × D2C

広告・LP・SNSのどこに「地雷」があるか

商品を企画し、自社のLPやECで売り、SNSやインフルエンサーで広げる。D2Cはこの一連の流れを自分たちで完結できるのが強みです。しかし裏を返せば、「表示」に関する責任もすべて自社に集まるということ。広告代理店や卸が間に入るビジネスと違い、表現のチェックを肩代わりしてくれる存在がいません。

その表現を直接縛るのが、本記事で扱う景品表示法(けいひょうほう)です。健康食品・化粧品・サプリ・通販といったD2Cと親和性の高い領域は、近年の行政処分が集中している分野でもあります。「知らなかった」では済まされず、措置命令による社名公表、課徴金、さらに2024年からは直接の罰金(直罰)まで現実のリスクになりました。

この記事では、景表法の全体像を一枚の地図として押さえたうえで、D2C特有のリスクポイントを実際の処分事例とともに解説し、最後に自社で使えるチェックリストまで落とし込みます。

この記事の要点 ── 景表法は3ブロックで捉える

禁止禁止される行為
不当表示(盛りすぎ)と過大な景品類
防ぐ違反を防ぐ仕組み
管理上の措置(社内体制)と公正競争規約
措置違反したときの措置
行政・刑事・民事の3ルート
§ 01

景品表示法とは ── D2Cが最初に押さえる全体像

景品表示法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」。目的はシンプルで、消費者が商品やサービスを「正しく選べる」状態を守ることにあります。実際よりも良く見せる広告や、過大なオマケで判断を歪める行為を防ぎ、公正な競争を保つための法律です。

全体像は、次の3つのブロックで捉えると一気に整理できます。

景品表示法の全体像 正式名称:不当景品類及び不当表示防止法 / 目的:消費者が「正しく選べる」状態を守る ① 禁止される行為 不当表示の禁止 実際より著しく良く/有利に見せる表示 優良誤認表示 品質・内容を実際より優良に 有利誤認表示 価格・取引条件を実際より有利に 指定告示(ステマ等) 広告であることを隠す表示など 過大な景品類の制限 取引に付随して提供する 景品・特典には上限額がある (懸賞・総付景品など方法ごとに規制) ② 違反を防ぐ仕組み 管理上の措置 事業者に義務づけられた社内体制 ・表示管理の担当者を決める ・根拠資料を確認・保管する ・社内で表示をチェックする 公正競争規約 業界ごとの自主ルール ・業界の表示・景品の標準 ・違反を未然に防ぐ機能 「守りの体制」で違反を未然に防ぐ 事前対策がリスク管理の起点 ③ 違反したときの措置 行政措置 ・措置命令(再発防止・公表) ・課徴金納付命令(売上の3%) ・指導・勧告 刑事措置 ・罰則 ・直罰(100万円以下の罰金/2024〜) 民事措置 ・適格消費者団体による差止請求 ・返金措置 違反行為の種類に応じて対象が変わる ※ 不当表示と過大景品が「禁止される行為」、管理上の措置と公正競争規約が「それを防ぐ仕組み」、   そして違反すると行政・刑事・民事の3ルートの措置を受ける ── これが景表法の基本構造。 出典:景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)/消費者庁公表資料をもとに作成
図:景品表示法の全体像 ── 禁止される行為/防ぐ仕組み/違反時の措置

① 禁止される行為は2種類。「不当表示」(実際より著しく良く・有利に見せる表示)と、「過大な景品類」(取引にくっつけて提供するオマケや特典のうち、上限を超えるもの)です。

② 違反を防ぐ仕組みとして、事業者には「管理上の措置」(表示をチェックする社内体制づくり)が義務づけられ、業界ごとには「公正競争規約」という自主ルールが整備されています。

③ 違反したときの措置は、行政・刑事・民事の3ルート。措置命令や課徴金(行政)、罰則・直罰(刑事)、適格消費者団体による差止請求や返金(民事)が、違反の種類に応じて科されます。

D2C事業者がまず深く理解すべきは①の「不当表示」です。LP・商品ページ・広告クリエイティブ・SNS投稿──日々アウトプットしているコンテンツのほとんどが、この規制の対象だからです。

§ 02

規制の柱① 不当表示の禁止(3つの類型)

不当表示は、大きく3つのタイプに分かれます。D2Cで起きやすい順に見ていきましょう。

① 優良誤認表示 ── 「品質・効果」を盛りすぎる

商品やサービスの品質・内容・効果について、実際よりも著しく優れているかのように見せる表示です。サプリや化粧品で「効きそう」を演出しすぎるケースが典型で、D2Cで最も処分が多い類型といえます。

押さえどころ:不実証広告規制 効果・性能をうたう表示について、消費者庁が裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めたとき、事業者が期限内に妥当な資料を出せなければ、それだけで優良誤認とみなされます。「効くと信じていた」では通用せず、主張する効果には事前に客観的な根拠が必要だということです。
事例 / 優良誤認 + 課徴金

あるサプリメント販売事業者は、自社製品について「含まれる成分の働きで中性脂肪を下げる・血圧を下げる・コレステロールの酸化を抑える」といった効果が得られるかのような表示を行い、優良誤認と判断されました。措置命令にとどまらず課徴金納付命令まで科され、2024年8月〜2025年7月の期間ではこの事案が最も高額な課徴金に。同期間の課徴金総額は約3.3億円にのぼり、その多くが健康食品・化粧品・通販分野に集中しています。

あわせて注意:薬機法との重なり 健康食品や化粧品で効果効能をうたう表現は、薬機法(医薬品医療機器等法)の規制とも重なります。景表法だけクリアしても薬機法に抵触することがあるため、両面でのチェックが必要です。

② 有利誤認表示 ── 「価格・取引条件」を有利に見せすぎる

価格や取引条件を、実際よりも有利であるかのように見せる表示です。D2Cでは次の2つが要注意です。

二重価格表示。「通常価格9,800円 → 今だけ2,980円」のような見せ方は、その「通常価格」に実体がなければ有利誤認になります。実際にはほとんど売っていない価格を「通常価格」として並べ、常に割引しているように見せる手法が典型です。比較対照に使う価格は、相当期間にわたって実際に販売していた価格である必要があります。

定期購入(サブスク)の表示。D2Cの売上を支える定期購入モデルは、規制の最前線です。「初回限定100円」を大きく打ち出しながら、継続回数の縛り・2回目以降の価格・解約条件・支払総額を小さく分かりにくく表示するパターンは、有利誤認やダークパターン問題として厳しく見られます。なお定期購入は特定商取引法でも申込み確認画面の表示が義務化されており、景表法と合わせて対応が必須です。

③ 指定告示(特にステマ規制)── 「広告であること」を隠す

3つ目は、消費者庁が個別に指定した特定の表示で、その中でもD2Cに直撃するのがステルスマーケティング規制(ステマ規制)です。2023年10月1日から、広告であるのに広告だと分からないように見せる表示が、不当表示として明確に禁止されました。ここで絶対に押さえるべきポイントが2つあります。

最重要:規制を受けるのは「事業者(広告主)」 処分対象はインフルエンサーやモニター本人ではなく、依頼した側=自社です。「発信者に任せていた」は言い訳になりません。明示的に依頼していなくても、報酬提供などの客観的状況から「事業者の表示」と判断されれば対象になります。

そしてD2Cで起きやすいのは、ステマ規制施行後の処分事例が示すとおり、まさに定番施策の中にあります。

事例 / ステマ規制 初の処分

口コミ投稿の見返り提供。ステマ規制で最初の行政処分となったのは、ある事業者が顧客に高評価の口コミ投稿を依頼し、その見返りに割引を提供していた事案でした。「レビューを書いてくれたら割引・特典」というキャンペーンは、設計次第でステマになります。

事例 / PR表記の“消失”

自社サイトへの転載。あるサプリメント大手は、インフルエンサーにInstagram投稿を依頼し、その投稿自体には「PR」表記があって問題ありませんでした。ところがその投稿を自社ECサイトに転載した際にPR・広告の表記を付けず、第三者の純粋な感想であるかのように見せたとして措置命令に。SNS上では適切でも、自社サイトへの引用・まとめで広告であることが消えると違反になる──この「転載の落とし穴」はD2Cで非常に起きやすい論点です。

事例 / モニター施策

モニター・アンバサダー。機能性表示食品のモニターを募集し、参加者の投稿が広告と分からない形で拡散されたケースでも処分が出ています。「モニター」「アンバサダー」も、報酬や商品提供を伴えば事業者の表示として扱われ得ます。

対策はシンプルで、広告・タイアップには「広告」「PR」「プロモーション」等を、消費者がひと目で分かる形で明示すること。投稿本体だけでなく、自社サイトへの転載・引用・口コミまとめにも一貫して適用するのが鉄則です。

§ 03

規制の柱② 過大な景品類の制限

「景品類」とは、商品・サービスの取引に付随して相手に提供する経済上の利益のこと。購入者プレゼント、SNSキャンペーンの当選賞品、レビュー特典などが該当します。これらには提供方法ごとに上限額が定められており、D2Cのキャンペーン設計で見落とされがちです。

提供方法主な例景品の上限額(目安)
総付景品
もれなく全員に
「購入者全員に〇〇プレゼント」取引価額1,000円未満 → 200円
1,000円以上 → 取引価額の20%
一般懸賞
抽選・くじ等
「購入者から抽選で〇名様に」5,000円未満 → 取引価額の20倍
5,000円以上 → 10万円(総額は売上予定額の2%まで)
共同懸賞
複数事業者の合同
商店街・業界合同企画取引価額に関わらず30万円
(総額は売上予定額の3%まで)

たとえば3,000円の商品を買った全員にプレゼントする場合、総付景品の上限は600円(取引価額の20%)まで。「SNSをフォロー&リポストで応募」型では、購入が条件かどうかで懸賞ルールの適用が変わる点にも注意が必要です。豪華すぎる特典は、それ自体が違反になり得ます。

§ 04

違反するとどうなる ── 行政・刑事・民事の3ルート

違反したときの措置は、違反の種類によって対象範囲が異なります。D2Cの視点で整理したのが下の表です。

違反行為措置命令課徴金罰則・直罰差止・返金
① 優良誤認表示
② 有利誤認表示
③ 指定告示(ステマ等)
過大な景品類
管理上の措置の不備指導・勧告
※ 直罰(100万円以下の罰金)は優良誤認・有利誤認が対象。△は措置命令に従わなかった場合の罰則。差止・返金は適格消費者団体の差止請求や課徴金の返金措置を指す。

課徴金は優良誤認・有利誤認だけが対象です。算定の基本は、対象期間における対象商品・サービスの売上額の3%。ステマや景品の違反は課徴金の対象外ですが、措置命令による社名公表のレピュテーションダメージは決して小さくありません。

措置命令は「社名と違反内容が公表される」のが実務上最大のインパクトです。再発防止や一般消費者への周知が命じられ、報道されればブランド毀損に直結します。

民事ルートでは適格消費者団体が動きます。国に認定された消費者団体が、不当表示の差止めを請求できます。2024年改正では、団体が事業者に表示の根拠資料の開示を要請できる規定も新設されました。

§ 05

2023〜2024年の改正で何が変わったか

景表法はここ数年で大きく動いています。古い知識のままだと足をすくわれます。D2Cが特に更新すべき4つのポイントを時系列で整理します。

  • 2023.10 ステマ規制スタート

    広告であることを隠す表示が不当表示に追加。施行後すでに複数の措置命令が出ており、運用は本格化。インフルエンサー・口コミ・モニターを使うD2Cは最優先で体制を見直すべき領域です。

  • 2024.10 確約手続の導入

    違反の疑いを指摘された事業者が自主的に是正措置計画を申請し、認定されれば措置命令・課徴金を回避できる制度。ただし「申請すれば必ず認定」ではなく、措置の十分性と確実性が審査されます。事前対策が大前提、その上での“もしも”の手段と捉えるのが正解です。

  • 2024.10 直罰の新設

    優良誤認・有利誤認の表示に、100万円以下の罰金を直接科せる「直罰」が新設。従来は措置命令を経ないと刑事罰に至らなかったところ、悪質な表示には直接ペナルティが及ぶように。抑止力が一段強まりました。

  • 2024.10 課徴金制度の見直し

    過去に違反した事業者が再び違反した場合の割増しや、消費者への返金措置の弾力化などを整備。「一度きりなら軽く済む」という発想は通用しにくくなっています。

§ 06

違反を防ぐ「攻めの仕組み」

景表法は「やってはいけないこと」を並べるだけでなく、違反を未然に防ぐ仕組みもセットで求めています。

管理上の措置(社内体制づくり)

一般消費者向けに表示を行う事業者には、表示の管理体制を整えることが義務づけられています。表示を管理する担当者を定める、根拠資料を作成・確認・保管する、社内で表示をチェックする仕組みをつくる、といったことです。D2Cではこの体制が形骸化しがちで、「マーケ担当者の判断でLPを出す」状態は典型的なリスク。アフィリエイトやインフルエンサーへの委託でも、最終的な表示責任は広告主にあるため、委託先の表現を管理する仕組みが欠かせません。

公正競争規約(業界の自主ルール)

業界ごとに、表示や景品提供の標準を定めた自主ルールが存在します。自社の属する業界に規約があれば、それが実務の基準になり、違反の予防にも役立ちます。

これらをひと言でまとめれば、「合理的根拠を残し、出す前にチェックする体制」を作ることが最大の防御です。

§ 07

D2C実務チェックリスト

明日から使える確認項目を、5つの観点で整理しました。社内のチェックフローに組み込んでください。

LP・商品ページ

  • 効果・性能の表示に、客観的な根拠資料がそろっているか
  • 「No.1」「満足度〇%」などの最上級・数値表示に裏付け(調査の出典・条件)があるか
  • 体験談・ビフォーアフターが、誤認を招く演出になっていないか

価格・定期購入の表示

  • 「通常価格」に実体(相当期間の実販売実績)があるか
  • 初回価格の近くで、継続回数・2回目以降の価格・支払総額・解約条件が分かりやすく示されているか
  • 特商法の申込確認画面の表示要件も満たしているか

インフルエンサー・口コミ

  • タイアップ投稿に「広告」「PR」が明確に表示されているか
  • その投稿を自社サイトに転載・引用する際もPR表記が維持されているか
  • レビュー・口コミの“見返り提供”がステマになっていないか

キャンペーン・景品

  • プレゼントや特典が景品類の上限額の範囲内か
  • 総付か懸賞か、提供方法に応じた上限を適用しているか

社内体制

  • 表示の管理担当者・チェックフローが定まっているか
  • 根拠資料を保管し、後から提示できる状態か
  • 委託先(アフィリエイト等)の表現を管理する仕組みがあるか

まとめ

景品表示法は、「禁止される行為(不当表示・過大景品)」「それを防ぐ仕組み(管理上の措置・公正競争規約)」、そして「違反したときの行政・刑事・民事の措置」という3つの軸で捉えると、全体像がクリアになります。

D2Cにとって特に重い論点は、優良誤認(効果の盛りすぎ)、有利誤認(二重価格・定期購入)、そしてステマ規制(PR表記と転載の落とし穴)の3つ。いずれも実際に処分事例が出ており、2024年の改正で直罰や課徴金の見直しが入ったことで、リスクの“重さ”は確実に増しています。

守りの起点は、派手なテクニックではなく「根拠を残し、出す前に第三者がチェックする体制」です。表現の自由度が高いD2Cだからこそ、この体制が競合との差を分けます。

本記事は景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)および消費者庁の公表資料・報道をもとに、一般的な解説として作成したものです。個別の表示が違反にあたるかの判断や具体的な対応については、最新の法令・ガイドラインを確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。